眠れる「森林資源」を活かす道は? (上)

リサイクルトレンドウォッチ(53)

眠れる「森林資源」を活かす道は? (上)
日本の森林蓄積は、年々増加している

阿修羅像などで知られる奈良の興福寺(世界遺産寺院)で、710年に建てられた中金堂の復元が、2018年の落慶をめざして進められています。中金堂は興福寺の中心となる重要なお堂ですが、藤原不比等による710年の創建以来、7度も火災により焼失、その度に再建されてきました。江戸時代に仮再建されたものが老朽化により2000年に解体され、創建1300年を迎えた2010年から当時の姿の復元をめざして日本建築の伝統的な木工技法で再建が進んでいるものです。
さて、再建工法は日本の伝統様式ながら、建物を支える66本の柱に使われているのは、アフリカ産のアパという直径2メートルにもなる巨木。梁などにはカナダ産のヒノキが使われています。樹齢200年を超えるような巨木は、残念ながら日本ではほぼ手に入らないためだそうです。
日本の森林面積は2500万ヘクタール。国土に占める森林面積の割合は68.5%で、OECD加盟国の中ではフィンランド(73.1%)に次ぐ2位となり、スウェーデン(68.4%)を上回っています(FAQ・2015年調査による)。しかし、戦後復興期には6000万㎥にも達していた木材生産量は、今では1800万㎥に過ぎず、戦後9割を超えていた木材自給率も現在は2割以下にまで落ち込んでいます。
なぜ、日本の林業がこれほどまでに衰退してしまったのか? よく指摘されるのが「安い外材が日本の林業をダメにした」という説です。戦後、復興のための木材需要が高まり、年間40-50万ヘクタールのペースで日本中の山や草地にスギやヒノキが植えられました。こうした人工林は、現在の日本の森林面積の約4割を占めています。しかし、高度成長期にはこれらの植林が未だ育っていなかったため、日本は1960年に木材輸入の自由化をスタート。1964年に完全自由化されたことで、大量に安定供給できる外材が市場を席巻し、国産材の供給量は低下の一途をたどりました。
日本の森はいま、新たな局面を迎えています。というのも、かつて大量に植林されたスギやヒノキが一斉に伐採期を迎えているからです。森林で生育する樹木群は時とともに絶えず変化しています。この40年で森林面積は変わりませんが、樹木の体積を示す蓄積量は、40年前の20億㎥から大きく増えています。
林野庁が1999年から実施している「森林資源モニタリング調査」によれば、第1期(1999~2003)調査から推計される全国の森林蓄積量(皮付の幹の体積)は52億㎥でしたが、第2期(2004~08)調査では60億㎥に達しました。40年前のおよそ3倍の水準です。
世界有数の貴重な宝、日本の森林資源を、有効に活かす手立てはないものか? いま注目されるアプローチについて、次回ご紹介します。

環境省がフロン類回収 実態調査へ

リサイクルトレンドウォッチ(52)

環境省がフロン類回収 実態調査へ
進まないフロン回収、2014年度の回収率は32%どまり

地球温暖化やオゾン層破壊につながるフロン類の回収率が低迷していることから、環境省が実態調査を始めるようです。明日13日にも有識者による検討会を立ち上げ、回収率を上げるための制度づくりを議論すると、朝日新聞が報じました。
オゾン層を壊す特定フロンや、温室効果をもつ代替フロン(HFC)の機器廃棄時の回収は、法律で義務化されています。しかし回収率は両者を合わせて2014年度は約32%にとどまっています。国は2020年に50%、2030年に70%の回収をめざしています。
回収率が上がらないのは、フロン類は無色無臭なため違法な放出や、漏れに気付かない例があるためではないかと、環境省はみています。仮に現在の回収の技術基準を順守した場合でも、取り残しが出る可能性があるといいます。
そこで、スーパーや倉庫など業務用の冷凍空調機器で廃棄時のフロン類の回収率を測定。代表的な機器約30件について調査を行い、その結果をもとに回収の技術基準改正を検討する、としています。
2015年4月に施行された「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)」では、業務用エアコン・冷凍冷蔵機器の管理者に、機器およびフロン類の適切な管理が義務づけられました。新たな義務として「フロン類算定漏えい量報告」が加わり、年間1000トン以上のフロン類の漏洩を確認した場合、事業者は国に報告書を提出すること、とされています。
当然ながら、漏えい量を算定するためには、所有するフロン機器ごとの適切な管理(冷媒の種類/定格出力/定期点検/充填・回収記録)が行われていることが前提となります。
フロン管理者の方々には、こうした国の動きを注視していただくことが肝要かと思われます。

☞フロン排出抑制法(平成27年4月施行)の概要チラシはこちら
http://www.env.go.jp/earth/furon/files/kanrileaflet.pdf
☞環境省 フロン排出抑制ポータルサイトはこちら
http://www.env.go.jp/earth/furon/index.html

PCB使用製品・廃棄物の早期処理に向け環境省が注意喚起!

リサイクルトレンドウォッチ(51)

PCB使用製品・廃棄物の早期処理に向け環境省が注意喚起!
中国・四国・九州・沖縄のタイムリミットは、500日を切る

環境省は11月15日、コンデンサ-、変圧器など有害なPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の適正な早期処理を促すため、ホームページ内に「PCB早期処理情報サイト」を開設しました。
今年8月1日に施行された改正PCB特別措置法により、PCB廃棄物は地域ごとに定められた処分期間内での処分が義務付けられました。高濃度PCB廃棄物は、処分期間を過ぎると事実上廃棄処分ができなくなります。タイムリミットが最も早く訪れるのが中国・四国・九州・沖縄で、このエリアでは保管されている変圧器やコンデンサーなどの高濃度PCB廃棄物を、2017年度末までにJESCO(中間貯蔵・環境安全事業)北九州事業所に処分委託しなければなりません。タイムリミットが残り500日を切ったことから、環境省が情報サイトを開設し、広く早期処理を呼びかけているものです。
PCBは難分解性で慢性毒性をもつ化学物質。国内最大規模の食品公害「カネミ油症事件」の原因物質となったように、生体内に取り込まれやすく残留毒性が高いため、体内に蓄積すると健康被害をもたらします。耐熱性や絶縁性に優れた性質から、かつては変圧・コンデンサ-・安定器などの絶縁油や感圧紙、塗料、印刷インキの溶剤などに、幅広く利用されていましたが、毒性が社会問題となり、現在は新たな製造が禁止されています。
1953年から1972年に国内で製造された変圧器・コンデンサーには、絶縁油にPCBが使用されたものがあります。該当品は、機器に取り付けられた銘板を確認することで判別できます。古い建物を解体する際には、トランス、コンデンサ-、蛍光灯安定器等にPCBが含まれている可能性があるため、注意が必要です。

☞環境省 PCB早期処理情報サイトはこちら
http://www.env.go.jp/recycle/poly/pcb_soukishori/
☞PCB含有製品についての産業廃棄物適正処理推進センターのチラシ
https://www.env.go.jp/recycle/poly/pcb-pamph/full5.pdf

日本の資源循環脅かす韓国の鉛リサイクル

リサイクルトレンドウォッチ(50)

日本の資源循環脅かす韓国の鉛リサイクル
20年手つかずの“バーゼル法改正”へ向け、機運高まるか

使用済みの車のバッテリーの韓国への輸出が止まりません。バッテリーに含まれる鉛が高値で買い取られるためです。
韓国業者が日本で大量に廃バッテリーを買い付けるようになったのは鉛の地金価格が高騰した2007年以降。財務省貿易統計によると、使用済みバッテリーの輸出量は07年に3万トンを超え、12年以降は毎年7~10万トンに拡大しています。その大半が韓国への輸出で、国内の使用済みバッテリーの4割近くが韓国に出ている(日本鉱業協会)ともいわれます。
韓国が昨年輸入した廃バッテリーは42万トン(韓国貿易統計)。日本、米国、中東をはじめ全世界に集荷ネットワークを張り巡らせ、ここ10年で輸入量は10倍以上に伸長。それに伴い中東向けの補修バッテリー輸出や、欧米向けの地金輸出も拡大させ、世界最大の「鉛加工貿易国」として台頭してきました。
その韓国で今年6月、廃バッテリーリサイクル業者11社がリサイクル過程で発生した有害物質を不法投棄したとして、当局に摘発されました。韓国当局の発表によると、摘発された業者は不法投棄により約56億ウォン(約5億円)の利益を得ており、処理費を浮かした分を買い取り価格に上積みしていた可能性が疑われています。
この事件は、高値で廃バッテリーを大量購入する韓国業者により事業収益を圧迫されてきた国内の鉛関連業界に大きな波紋を広げました。使用済み鉛バッテリーは有害廃棄物に分類され、リサイクル過程で生じるヒ素や硫酸など有害物質は法律で規制されます。設備や廃棄費用のコストを義務として負担する国内事業者の間に、「韓国勢は不法投棄で調達時の競争力を得ていた」との疑念が高まるのも無理からぬことでしょう。
こうした事態を受け、環境省はバーゼル法の改正も視野に対策の検討を始めたようです。バーゼル法とは、廃棄物の越境移動を巡る問題の解決などを目的とするバーゼル条約に日本が1993年に批准したことに伴う国内実施法。越境移動の活発化に対応し欧州等はダイナミックに国内制度を見直していますが、日本では20年以上にわたり大きな見直しが行われていません。
貴重な金属資源として電子機器スクラップの争奪戦が世界中で激しくなるなか、国内で処理されるべき廃棄物の海外流出を防ぎ、環境リスクを輸出しないためのしくみが、時代の変化に即して柔軟かつタイムリーに運用されることを期待いたします。

☞ 環境省・廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会報告書はこちら
http://www.env.go.jp/press/mat01/102670.pdf
☞ 同報告書のポイントはこちら
http://www.env.go.jp/press/files/jp/102978.pdf

廃棄スマホの輸入審査、短縮へ

リサイクルトレンドウォッチ(49)

廃棄スマホの輸入審査、短縮へ
経産省・環境省、アジアからの希少金属確保めざし規制を緩和

経済産業省と環境省が、廃棄スマホやノートパソコンを輸入しやすくする規制緩和に踏み切ることになりました。スマホやパソコンの廃棄量は世界的に増加しています。現在、国内では香港や台湾、タイなどアジア各国・地域から、年3万~4万トン程度の廃棄スマホ・パソコンを輸入。その中から金やタングステン、ニッケルなどの希少金属を取り出し、再利用しています。これらの電子機器に含まれる希少金属は、リサイクルすれば再び電子部品の材料になることから、「都市鉱山」と呼ばれています。政府は輸入審査手続きを大幅に短縮することで、希少金属の確保と再利用の促進をめざすものです。
廃棄された電子機器の輸入については、不法投棄や不適正なリサイクルを防ぐため「特定有害廃棄物の輸出入規制法(バーゼル法)」によって、国が輸出入業者やリサイクル工場を事前にチェックするルールが定められています。現行法ではアジアから廃棄スマホを輸入する場合、現地の輸出業者が送り先の日本のリサイクル工場や輸出量を記載した種類を日本政府に提出。リサイクル工場側も受け入れ量や処理方法を記して提出し、政府が双方の情報をつきあわせて確認したうえで輸出を許可するため、審査に最短2カ月、最長で1年程度かかっています。一方、EUでは最短数週間で手続きが終わるため、審査に時間がかかる日本を避け、欧州にアジアの廃棄スマホが流れているといわれます。
経産・環境両省は来年の通常国会にバーゼル法の改正案を提出。法改正後は事前に認定したリサイクル工場であれば、輸出元が契約書類を示すだけで輸入できるようにして、アジア各国からの輸入の場合、現在2ヵ月~1年を要している審査期間を数週間から1ヵ月程度に縮める方針です。
日本では年5000万台を超える携帯電話・スマホが捨てられていますが、再利用率はわずか1割程度。国内リサイクル率の向上ととともに、こうした輸入拡大策が、都市鉱山からの希少金属の安定的な確保につながることを期待します。

OECD鉄鋼委員会、中国も参加の「グローバルフォーラム」を設置

リサイクルトレンドウォッチ(48)

OECD鉄鋼委員会、中国も参加の「グローバルフォーラム」を設置
長びく鉄鋼の過剰生産、チャイナリスク解消への一歩となるか?

経済協力開発機構(OECD)が8、9日にパリで鉄鋼委員会を開き、世界的な鉄鋼の過剰生産の解消に向けた協議の場を設けることで合意した、と日経新聞が報じました。今回の鉄鋼委員会にはOECD非加盟の中国やインドも招待国として参加。新たに設ける協議の場、「グローバル・フォーラム」は中国が加盟しないOECDとは切り離し、各国が対等な立場で議論する独立した会議体にすることを確認しました。
世界の鉄鋼過剰生産能力は2015年についに7億トンを超えました。日本の粗鋼生産量(1億トン強)の約7倍に相当する数字です。7億トン超のうち約4.3億トンが中国分(米国鉄鋼協会の見解)であるとされます。中国は経済の減速が鮮明になる中、内需で消費できない鋼材を国外へ安値で輸出。これが鋼材の国際市況を暴落させ、世界の鉄鋼メーカーを疲弊させています。生産量で世界首位のアルセロール・ミタルや、日本勢のライバルである韓国大手のポスコも15年12月期は最終赤字に沈んだほどで、インドのタタ製鉄は英国事業の売却検討を表明しています。
中国製品は高品質の日本製品とはそれほど競合せず、日本メーカーの打撃は比較的小さいとされてきましたが、やはり対岸の火事とはいかず、輸出採算の悪化、中国製品に押し出された韓国・台湾製品の日本市場への流入など、チャイナ・リスクの影響はじわじわと広がっています。
中国には町工場レベルを含めると約500社の鉄鋼メーカーが存在。年産3000万トン以上のメーカーは6社ですが、上位メーカーへのシェア集中は一向に進まず、乱立状態が続いています。自国メーカーの半分は赤字とされるだけに、中国政府も再編の必要性は認識しており、2015年まで10ヵ年続いた「鉄鋼産業発展政策」に代わる「調整計画」を打ち出しました。しかし雇用や税収を維持したい地方政府の抵抗にあうなど、中国特有の事情から、足踏みが続いています。
そうした中で設立された「グローバル・フォーラム」。日米欧の先進国に加え、中国やインドが参加する枠組みの中で、各国の生産量や設備能力の情報を共有する体制をいかに整えるのか、各国が補助金などで競争をゆがめる措置を取りやめられるのか、などが議題になります。年内にも開かれる見通しの第1回会合を、まずは注視したいものです。

国内環境産業の市場規模、初の100兆円に

リサイクルトレンドウォッチ(47)

国内環境産業の市場規模、初の100兆円に
廃棄物処理・資源有効利用の市場規模は45.8兆円、経済波及効果は91.1兆円に

GDPが低迷するなかで、廃棄物処理・リサイクルや温暖化防止などの環境関連市場が伸長し、国内経済において存在感を増していることが環境省のデータから明らかになりました。
環境省がこのほど発表した推計によれば、2014年の国内の環境関連産業の市場規模は約105兆4133億円(前年比1.3%増)で、統計をとり始めた2000年以降初めて100兆円規模に達しました。市場規模は2000年の58兆円と比べると約2倍に拡大しており、雇用者数も約256万人と過去最多になっています。
分野別にみると、最も市場規模が大きかった「廃棄物処理・資源有効利用」が約45.8兆円。次いで太陽光・風力発電などの再生エネや省エネ機器、自動車の低燃費化などを含む「地球温暖化対策」が約37.7兆円、化学物質汚染防止や下水・排水処理などの「環境汚染防止」が13.6兆円、「自然環境保全」が8.2兆円となっています。
全産業に占める環境産業の市場規模の割合は、2000年の6.2%から2014年の11.1%まで増加し、環境産業が日本の経済成長に与える影響は大きくなっている、としています。
環境産業の付加価値額(企業等の生産活動によって新たに生み出された価値)の推計は、42.4兆円で、うち「廃棄物処理・資源有効利用」が22.4兆円と最大を占め、「地球温暖化対策」が11.3兆円でこれに続いています。全産業の付加価値額(GDP)が横ばい傾向にあるなか、環境産業の付加価値額は景気減速の影響を受けた2009年を除き、概ね増加傾向に。GDPに占める環境産業の付加価値額の割合は、2000年の5.5%から2014年の8.7%にまで増加しており、付加価値額の面においても、環境産業が我が国の経済成長に与える影響が大きくなっている、としています。

☞ 環境産業の市場規模等の推計結果概要(環境省・2014年度版)はこちら
http://www.env.go.jp/policy/keizai_portal/B_industry/1-3.suikei.pdf

金・銀を含む鉱石を海底で養殖??

リサイクルトレンドウォッチ(46)

金・銀を含む鉱石を海底で養殖??
海洋開発機構、「人工熱水噴出孔を利用した黒鉱養殖プロジェクト」を本格化

「熱水」と呼ばれる海底の火山活動を利用して金や銅などの金属を「人工的に養殖」しよう、という研究が進んでいます。研究は海洋研究開発機構(国立研究開発法人)と、東京大学・九州大学・東北大学・早稲田大学との共同プロジェクトよるものです。
日本は世界第6位の広さの排他的経済水域をもっています。近海には石油代替エネルギー資源として期待されるメタンハイドレードやマンガン団塊、レアメタルを含む泥などが見つかり、今後の開発が期待されています。プロジェクトは、そうした資源のひとつとして、海底から噴き出す熱水が作る「チムニー」に注目したもの。チムニーはアリ塚のような形状をしていて、銅や金、亜鉛などの有用金属を多く含みます。ちょうど温泉の湯の花が固まったようなイメージといえるでしょうか。
2010年に地球深部探査船「ちきゅう」により、沖縄トラフの熱水活動域で掘削調査が行われ、これにより複数の人工熱水噴出孔が形成されました。その後の無人探査機による潜航調査などから、この熱水噴出孔上でチムニーが1年で約7メートルと、急速に成長していることが判明。試料採取分析などの結果、沖縄沖のチムニーは亜鉛をはじめ銅、金、銀などの金属を多く含み、秋田県の山間部などで採掘されていた「黒鉱」と呼ばれる鉱石に成分が近いこと、しかも濃度は陸上黒鉱鉱床の高品位鉱石に匹敵するかそれ以上のものであることがわかりました。
共同研究グループは、人工熱水噴出孔上に硫化鉱物に富む高品位のチムニーが急成長したメカニズムを利用して、黒鉱鉱石を養殖するプロジェクトに本格的に着手。 2016年2月、海洋調査船「ちきゅう」から沖縄トラフの熱水サイトに長期間モニターのための「黒鉱養殖装置」を投入し、実験を行っています。
これまで、自然に成長したチムニーから採れた鉱石は1年で約40トン。鉱山として操業するには1日1000トン程度の規模が求められるそうです。沖縄沖の実験装置は12月に回収してデータ分析を行う予定とか。資源に恵まれない日本で、これから進められようとしている「鉱石の海底養殖」。夢のあるチャレンジを、静かに応援したいと思います。

本プロジェクトに関する海洋研究開発機構の報道資料はこちら☞
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20160225_2/

国交省、コンテナ船で熊本地震の災害廃棄物を広域海上輸送

リサイクルトレンドウォッチ(45)

国交省、コンテナ船で熊本地震の災害廃棄物を広域海上輸送
最大130万トン、中越地震の2倍の災害ごみ処理が課題に

国土交通省は平成28年熊本地震に伴う災害廃棄物について、熊本港からコンテナ船を活用した広域海上輸送を6月13日より実施していると、21日に発表しました。
熊本地震による災害廃棄物は、環境省によると大分県分を含めて100万~130万トンにのぼります。2004年の新潟県中越地震(60万トン)と比べても2倍程度に達し、11年の東日本大震災(2000万トン)、1995年の阪神大震災(1500万トン)に次ぐ量となる見通しです。熊本県は2年以内に処理を終える方針を固め、可能な限りリサイクルと減量化を図り、埋め立て処分量を減らしたいとしています。
各市町村が主体となって一般廃棄物処理施設や民間の産業廃棄物処理施設を活用して処理が行われますが、作業を加速するため県や環境省が調整に入り、県外の処理施設を利用する広域処理も視野に検討が行われてきました。
災害廃棄物の早期処理には、域内での処理に加え、状況に応じた広域処理が不可欠。過去には東日本大震災や平成27年関東・東北豪雨の際に、コンテナ船を活用して災害廃棄物の広域海上輸送が行われています。今回の地震では、災害廃棄物を熊本港から大阪港に海上輸送し、三重県の廃棄物処理施設に陸送する計画で、2船(積載可能コンテナ数72 TEU)を使用して、週3日の頻度で約2ヶ月輸送が行われるもようです。
災害廃棄物は、M7級首都直下地震では1.1億トン、M9級南海トラフの巨大地震では最大3.5億トンになると見込まれ、南海トラフ巨大地震の場合、被災地だけで処理すると6~20年の歳月がかかるとされています。東日本大震災後、環境省は地域の災害廃棄物対策を強化するため、北海道から九州まで全国を8つに分けた地域ブロック協議会を立ち上げました。
また、昨年9月には環境省が音頭をとり関連学会や業界団体が参加する「災害廃棄物処理支援ネットワーク」が発足。今回の熊本地震でも、神戸市や広島市が相次いでごみ収集車を派遣するなど、「遠隔地の自治体の支援を仰ぐ橋渡しにネットワークが役立った(環境省)」といいます。いつ起こるかわからない大規模自然災害に備え、平時からの取り組みがますます重要になっていることを痛感します。

国交省 熊本地震災害廃棄物・広域海上輸送についてはこちら☞
http://www.mlit.go.jp/report/press/port06_hh_000129.html
全国の災害廃棄物対策地域ブロックについてはこちら ☞
http://kouikishori.env.go.jp/action/regional_blocks/

廃棄物リスク事例—ダイコー廃棄食品横流し事件のその後

リサイクルトレンドウォッチ(44)

廃棄物リスク事例—ダイコー廃棄食品横流し事件のその後
「処理困難通知」を受け取った委託企業の困惑

今年1月、愛知県の産業廃棄物処理業者のダイコーが廃棄食品を不正に横流しするという前代未聞の事件が発覚しました。壱番屋の廃棄冷凍ビーフカツの流出を発端に、横流し事例が続々と明るみに出て、排出事業者として大手食品メーカーや流通企業の名前が次々と挙がるなど、社会に大きな衝撃を与えました。
数ヵ月を経て一般的なマスコミ報道は少なくなったものの、業界内部では事件が尾を引き、波紋はいまも広がり続けています。
愛知・岐阜・三重の3県にまたがるダイコーの工場や倉庫に残されている廃棄物の量は、約1万5000㎥にのぼると推定されます(愛知県、岐阜県、三重県の廃棄物担当課による推定の合計)。県内に推定8900㎥の廃棄食品がある愛知県は、2月29日、ダイコーに対して「廃棄物処理法で定められた上限を超える保管」などの違反にあたるとして、行政処分の改善命令を出しました。ところがこれを受けてダイコーは3月3日、同社に処理を委託していた52の取引企業(排出事業者)に「処理困難通知」を送付しました。
「処理困難通知」とは、2011年施行の改正廃棄物処理法に盛り込まれた制度で、倒産などで事業を継続できなくなった産廃業者が排出事業者に通知するもの。この通知を受け取った排出事業者には、産廃業者に代わって環境保全上の措置を講ずる義務が生じます。今回の場合、事実上倒産しているダイコーに代わって、処理を委託していた取引企業(排出事業者)が、自らの負担で廃棄食品の悪臭や飛散防止の措置を講じ、保管場所から撤去し、処分を進めなければなりません。
排出事業者による自主回収はすでに始まっているものの回収量は少なく、最も進んでいる愛知県でも4月時点での回収量は、排出事業者20社・124トンにすぎないとのこと。残された大量の廃棄食品は焼却処分するしかありませんが、腐敗による運搬の困難や、塩分含有食品の焼却の困難などで「処分費用は1トンあたり3-4万円に及ぶのでは」と見積もる元産廃Gメンも・・・
愛知県は「今のところ排出事業者に対して報告徴収や措置命令などの行政処分を下す予定はない」としていますが、処理困難通知を受け取った排出事業者に回収を急がせています。悪臭など周辺への環境被害が深刻化すれば行政が代執行により回収を行う可能性もあり、その場合、一旦税金などで賄われる処理費用は、最終的には排出事業者に請求されます。社名公表による企業イメージの悪化や撤去費用の負担など、排出事業者が受けるダメージは測り知れないものとなります。
『日経エコロジー』がダイコーと取引のあった排出事業者を対象に実施したアンケートによれば、回答企業の多くがダイコーを委託先に選んだ理由として「食品リサイクル法の登録再生利用事業者だった」ことを挙げています。改正廃棄物処理法で努力義務とされた処理状況の現地確認を実施していた委託企業も多かったものの、取引先の目を欺くダイコーの悪質な手口に、廃棄食品の横流しを見抜くことはできなかったようです。
廃棄物処理事業者のコンプライアンスが何よりも問われていることはまぎれもない事実であり、われわれ業界は襟を正さなければなりませんが、委託企業側にも「登録事業者だから」「マニフェスト(産業廃棄物管理票)が返送されていたから」だけでは、不適正処理に巻き込まれる可能性を排除できないことを知っていただくことが必要です。
「廃棄物リスク」から事業活動を守るためにも、廃棄物管理の徹底がいまや企業の最重要課題のひとつであることに、留意いただければと考えます。

※本稿は「日経エコロジー2016年6月号」をもとに構成しました。