“都市鉱山からオリンピックメダル”プロジェクトが本格始動

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“都市鉱山からオリンピックメダル”プロジェクトが本格始動
「金銀銅8トンを19年春までに」—回収目標に向け全国に取り組み広がる

東京五輪・パラリンピック組織委員会が、2020年大会の金、銀、銅メダルを全て国内の都市鉱山から製造するプロジェクトを進めています。
名称は「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」。都市鉱山とは、家電製品や携帯電話など都市で廃棄される電子機器の中に含まれる金銀銅などの金属資源のこと。デジタルカメラ、プリンター、電子レンジ、ゲーム機、ドライヤーなどの身近な製品には貴重な金属資源が大量に含まれており、これらの不用品を一般家庭などから集め、取り出したリサイクル金属で作製したメダルを「都市鉱山メダル」呼んでいます。
2016年に開催されたリオデジャネイロ五輪では銀と銅のメダルに30%リサイクル金属が使われましたが、全メダルをリサイクル金属で作った事例は過去になく、メダル全てを「都市鉱山メダル」とするのは、3年後の東京五輪が史上初めての試みになります。
本プロジェクトの提案者の1人である物質・材料研究機構のアドバイザー、原田幸明氏によれば、「オリンピック・パラリンピックでアスリートに授与されるメダルは約5000。必要な金属量は金・=9.6kg、銀=1210kg、銅=700kg。金9.6kgを回収するには、携帯電話だけなら数十万台、パソコンだけなら数万台に相当するが、金メダルは銀の土台に金メッキを施しているため銀や銅より必要量は少なく、必ず集まるものと期待している」とのこと。
加工時のロスなどを見込むと実際には4倍程度が必要で、2019年春ごろまでに金銀銅合計で約8トンが回収目標とされています。プロジェクトが公認する回収主体は、NTTと自治体、国による認定事業者。先行して取り組みを始めた東京都に続き、メダル専用の回収ボックス設置や回収イベントの開催が全国の自治体に広がっています。
資源小国といわれる日本ですが、足元の都市鉱山に眠っている金は7千トン、銀は約6万トンとも推計され、潜在量は天然鉱山が豊富な世界有数の資源大国並み。しかしながら回収率は低く、2013年4月に小型家電回収法が施行されて以降も、年間発生量(約65万トン)の8%程度にとどまっています。
オリンピックを契機に都市鉱山への一般の認知が高まり、家庭に退蔵されている使用済み電子機器などのリサイクルが大きく進むことを期待します。

「都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」の概要はこちら☞
https://tokyo2020.jp/jp/games/medals/project/

小型家電の回収について—当社の事業案内はこちら
http://www.m-kou.co.
jp/biz_appliance.html

 

下水汚泥肥料などで育てた農産物、『じゅんかん育ち』のネーミング決定!

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下水汚泥肥料などで育てた農産物、『じゅんかん育ち』のネーミング決定!
“ビストロ下水道”=下水道資源の農業への活用をブランド名で後押し

国土交通省は4月13日、下水汚泥を発酵した肥料で育てた農作物など、「下水道発食材」の愛称を『じゅんかん育ち』に決定したと発表しました。
農業生産には肥料が不可欠ですが、日本はその原料となるリン鉱石を全量輸入にたよっています。農業・食品に関わるリンの輸入量は年間56万トンに及びますが、リン鉱石の価格は、世界的な食糧需要の急増や主要産出国の輸出制限等により、この10年ほど乱高下が続いています。
一方、国内の下水道には日本のリン輸入量の約1割にも相当するリンが流入しているとされますが、そのうちコンポスト(汚泥肥料)として利用されているのはわずか1割にすぎません。
下水処理場には、肥料原料となるリンや窒素のほかにも、栄養塩を含んだ処理水、熱や植物の生長・光合成を促進するCO2(二酸化炭素)など、さまざまな有機物資源やエネルギーが集まっていますが、その利用は一部に限られています。
国土交通省では、こうした下水道資源(再生水、汚泥、熱、CO2等)を農作物の栽培等に有効利用し、農業の生産性向上につなげようと、「BISTRO (ビストロ)下水道」の名称で取り組みを推進してきました。
汚泥肥料は穀物や野菜栽培に幅広く使われていますが、ほかにも下水の再生水を使用した水稲、サトウキビ、スッポンの養殖や、水処理過程で発生する熱・CO2を利用したハウス栽培、水耕栽培、アオノリの養殖など、「ビストロ下水道」の取り組みと成果が北から南まで、全国に広がっています。
こうした下水道発食材のイメージを向上するとともに、より親しまれやすい愛称をと、公募したネーミングコンテストで、833点の応募作品から選ばれたのが『じゅんかん育ち』。持続可能な環境調和型の農業を代表する農産品ブランドとして、店頭でその名前を見かける機会が増えるかもしれません。

国土交通省/日本下水道協会「ビストロ下水道」のレシピブックはこちら☞
http://www.mlit.go.jp/common/001036780.pdf

漁礁になった海底がれき--東日本大震災から6年

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漁礁になった海底がれき--東日本大震災から6年
三陸沖海底の生態系を海洋開発研究機構が調査

東日本大震災から6年。東北地方太平洋側は地震と巨大津波により海の中も甚大な影響を受け、沿岸から沖合にかけ無数のがれきが沈んでいます。環境省の推計では、津波で海に流れ出た震災がれきは約500万トンに達し、このうち350万トンがまだ海底に沈んでいるとされます。そうしたなか最近の海底調査で、流されたがれきが海底でさまざまな生き物を集める「漁礁」のようになり、豊かな海が戻っている様子がわかってきました。
海洋研究開発機構は、今年2月11日~27日にかけ、調査研究船と無人探査機を使って三陸沖の海底環境や海底地形、生物分布を調査しました。海底では谷底のような地形になったところにがれきが多く集まり、水深540メートルの場所では車のバンパーや漁網に、クモヒトデやウミシダなどが群がっている様子が確かめられました。
この調査は、三陸沖の巨大地震や津波による海洋生態系への影響を研究し、被災地漁業の復興へ貢献することを目指した「東北マリンサイエンス拠点形成事業」(TEAMS)の一環として定期的に行われているもの。
2012年3月に、硬いものに付着して暮らすのを好むゴカイ類などががれきに集まっているのが初めて確認されました。以後、毎年の調査で、生物が増えている様子がわかってきています。がれきに群がるクモヒトデ、ウミシダ、ゴカイなどを餌にする魚が寄ってきて、がれきがいわば「漁礁」のような役割を果たしているとみられ、高級魚として知られるキンキやウニなども確認されているそうです。
TEAMSホームページで公開されているギャラリーでは、調査・観測で撮影された、東北の海にすむさまざまな生物の選りすぐりの動画を見ることができます。
海洋研究開発機構では、三陸の海にどんな生物が種類どの程度の密度ですんでいるかを示す地図づくりも進めているとか。季節ごとの変動や餌などとの関係を解明することで、環境に配慮した適切な漁獲量の判断や、将来同様の津波被害が起きた時の復興にも役立てたい、とのねらいもあるようです。

東北マリンサイエンス拠点形成事業(TEAMS)ホームページ
東北の海にすむ生物や海中の動画ギャラリーはこちら☞
http://www.i-teams.jp/gallery/j/index.html

眠れる「森林資源」を活かす道は? (下)

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眠れる「森林資源」を活かす道は? (下)
伐り出した1本の木を最後まで活かす「カスケード利用」が鍵に・・

戦後全国につくられた人工林が成長し、いまや40年前の3倍にまで増加した日本の森林蓄積(皮付の幹の体積)。その量は60億㎥に達し、欧州(ロシアを除く)のどの国よりも多いといわれます。
植林から数十年を経たスギやヒノキがまさに伐りどきを迎えているわけですが、森林1ha当たりの木材生産量(㎥)をこの10年平均で見ると、ドイツ5.36㎥、オーストリア4.98㎥、フランス3.39㎥、イギリス3.06㎥に対し、日本はわずか0.69㎥。温暖多雨な気候条件にもかかわらず、ドイツやオーストリアの1/7、フランスやイギリスの1/5にとどまっています。
欧州主要国は1960年代から林道網整備に力を入れ始め、90年代末には林道ネットワークがほぼ確立しました。1990年代から持続可能な森林管理と木材利用へ向けた取り組みを展開して、世界をリード。着実に森を育てながら、木材生産・利用を拡大し、木質バイオマスのエネルギー利用などのイノベーションを進めてきたとされています。こうした手法で後れをとった日本が、足元の豊かな森林資源を活かすための課題は、木材を安く山から伐りだすための林道網の整備と、林業の機械化による生産性向上、複雑な流通経路の見直しにある、と専門家は指摘します。
課題山積ともいえますが、一方で明るい兆しも見え始めています。林野庁統計によれば、日本の木材自給率は平成23年から5年連続で上昇。平成26年には26年ぶりに30%台に回復し、平成27年には33.3%の自給率となっています。
木材から得られる産物は多種多様です。一本の樹木からは、製材用丸太・小径丸太・枝条・梢端が得られます。最も理想的な利用方法は、「見栄えの良い建築部材・家具」→「見えないところに使われる構造材」→「紙パルプ・ボード類用の低質材」→「木質バイオマス」と、質の高いものから順々にとっていって、最後まで余すところなく使い尽くすこと、と考えられています。いわば木材の“カスケード利用”*ともいえる使い方です。
近年、国内でも木質バイオマス発電施設が相次いで建設され、燃料用バイオマスチップの需要が増えています。製材加工の過程で大量に出る樹皮やおが屑など、十数年前までは埋立処分するしかない「廃棄物」であったものが、いまでは「副産物」として木質ペレットの原料となり、発電や事業用ボイラーに活用されています。
木材の伐り出しといえば、木を伐倒して価値のある丸太だけを引き出し残りは山に捨ててきたのが日本のこれまでの方式。今後、機械化により枝葉ごと林道まで引き出し低質材も運び出す「全木集材」に変われば、未利用木材が安価かつ安定的に供給されるようになります。木材の徹底したカスケード利用によって、再生可能エネルギーの利用が進むと同時に林業が再生する—-眠れる日本の森林資源が目覚める、そんな未来は、夢ではないような気がします。

*カスケード利用
資源やエネルギーを利用すると通常、品質が劣化します。その劣化した品質に応じて
段階的に有効利用することを「カスケード゛利用」といいます。

眠れる「森林資源」を活かす道は? (上)

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眠れる「森林資源」を活かす道は? (上)
日本の森林蓄積は、年々増加している

阿修羅像などで知られる奈良の興福寺(世界遺産寺院)で、710年に建てられた中金堂の復元が、2018年の落慶をめざして進められています。中金堂は興福寺の中心となる重要なお堂ですが、藤原不比等による710年の創建以来、7度も火災により焼失、その度に再建されてきました。江戸時代に仮再建されたものが老朽化により2000年に解体され、創建1300年を迎えた2010年から当時の姿の復元をめざして日本建築の伝統的な木工技法で再建が進んでいるものです。
さて、再建工法は日本の伝統様式ながら、建物を支える66本の柱に使われているのは、アフリカ産のアパという直径2メートルにもなる巨木。梁などにはカナダ産のヒノキが使われています。樹齢200年を超えるような巨木は、残念ながら日本ではほぼ手に入らないためだそうです。
日本の森林面積は2500万ヘクタール。国土に占める森林面積の割合は68.5%で、OECD加盟国の中ではフィンランド(73.1%)に次ぐ2位となり、スウェーデン(68.4%)を上回っています(FAQ・2015年調査による)。しかし、戦後復興期には6000万㎥にも達していた木材生産量は、今では1800万㎥に過ぎず、戦後9割を超えていた木材自給率も現在は2割以下にまで落ち込んでいます。
なぜ、日本の林業がこれほどまでに衰退してしまったのか? よく指摘されるのが「安い外材が日本の林業をダメにした」という説です。戦後、復興のための木材需要が高まり、年間40-50万ヘクタールのペースで日本中の山や草地にスギやヒノキが植えられました。こうした人工林は、現在の日本の森林面積の約4割を占めています。しかし、高度成長期にはこれらの植林が未だ育っていなかったため、日本は1960年に木材輸入の自由化をスタート。1964年に完全自由化されたことで、大量に安定供給できる外材が市場を席巻し、国産材の供給量は低下の一途をたどりました。
日本の森はいま、新たな局面を迎えています。というのも、かつて大量に植林されたスギやヒノキが一斉に伐採期を迎えているからです。森林で生育する樹木群は時とともに絶えず変化しています。この40年で森林面積は変わりませんが、樹木の体積を示す蓄積量は、40年前の20億㎥から大きく増えています。
林野庁が1999年から実施している「森林資源モニタリング調査」によれば、第1期(1999~2003)調査から推計される全国の森林蓄積量(皮付の幹の体積)は52億㎥でしたが、第2期(2004~08)調査では60億㎥に達しました。40年前のおよそ3倍の水準です。
世界有数の貴重な宝、日本の森林資源を、有効に活かす手立てはないものか? いま注目されるアプローチについて、次回ご紹介します。

環境省がフロン類回収 実態調査へ

リサイクルトレンドウォッチ(52)

環境省がフロン類回収 実態調査へ
進まないフロン回収、2014年度の回収率は32%どまり

地球温暖化やオゾン層破壊につながるフロン類の回収率が低迷していることから、環境省が実態調査を始めるようです。明日13日にも有識者による検討会を立ち上げ、回収率を上げるための制度づくりを議論すると、朝日新聞が報じました。
オゾン層を壊す特定フロンや、温室効果をもつ代替フロン(HFC)の機器廃棄時の回収は、法律で義務化されています。しかし回収率は両者を合わせて2014年度は約32%にとどまっています。国は2020年に50%、2030年に70%の回収をめざしています。
回収率が上がらないのは、フロン類は無色無臭なため違法な放出や、漏れに気付かない例があるためではないかと、環境省はみています。仮に現在の回収の技術基準を順守した場合でも、取り残しが出る可能性があるといいます。
そこで、スーパーや倉庫など業務用の冷凍空調機器で廃棄時のフロン類の回収率を測定。代表的な機器約30件について調査を行い、その結果をもとに回収の技術基準改正を検討する、としています。
2015年4月に施行された「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)」では、業務用エアコン・冷凍冷蔵機器の管理者に、機器およびフロン類の適切な管理が義務づけられました。新たな義務として「フロン類算定漏えい量報告」が加わり、年間1000トン以上のフロン類の漏洩を確認した場合、事業者は国に報告書を提出すること、とされています。
当然ながら、漏えい量を算定するためには、所有するフロン機器ごとの適切な管理(冷媒の種類/定格出力/定期点検/充填・回収記録)が行われていることが前提となります。
フロン管理者の方々には、こうした国の動きを注視していただくことが肝要かと思われます。

☞フロン排出抑制法(平成27年4月施行)の概要チラシはこちら
http://www.env.go.jp/earth/furon/files/kanrileaflet.pdf
☞環境省 フロン排出抑制ポータルサイトはこちら
http://www.env.go.jp/earth/furon/index.html

PCB使用製品・廃棄物の早期処理に向け環境省が注意喚起!

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PCB使用製品・廃棄物の早期処理に向け環境省が注意喚起!
中国・四国・九州・沖縄のタイムリミットは、500日を切る

環境省は11月15日、コンデンサ-、変圧器など有害なPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の適正な早期処理を促すため、ホームページ内に「PCB早期処理情報サイト」を開設しました。
今年8月1日に施行された改正PCB特別措置法により、PCB廃棄物は地域ごとに定められた処分期間内での処分が義務付けられました。高濃度PCB廃棄物は、処分期間を過ぎると事実上廃棄処分ができなくなります。タイムリミットが最も早く訪れるのが中国・四国・九州・沖縄で、このエリアでは保管されている変圧器やコンデンサーなどの高濃度PCB廃棄物を、2017年度末までにJESCO(中間貯蔵・環境安全事業)北九州事業所に処分委託しなければなりません。タイムリミットが残り500日を切ったことから、環境省が情報サイトを開設し、広く早期処理を呼びかけているものです。
PCBは難分解性で慢性毒性をもつ化学物質。国内最大規模の食品公害「カネミ油症事件」の原因物質となったように、生体内に取り込まれやすく残留毒性が高いため、体内に蓄積すると健康被害をもたらします。耐熱性や絶縁性に優れた性質から、かつては変圧・コンデンサ-・安定器などの絶縁油や感圧紙、塗料、印刷インキの溶剤などに、幅広く利用されていましたが、毒性が社会問題となり、現在は新たな製造が禁止されています。
1953年から1972年に国内で製造された変圧器・コンデンサーには、絶縁油にPCBが使用されたものがあります。該当品は、機器に取り付けられた銘板を確認することで判別できます。古い建物を解体する際には、トランス、コンデンサ-、蛍光灯安定器等にPCBが含まれている可能性があるため、注意が必要です。

☞環境省 PCB早期処理情報サイトはこちら
http://www.env.go.jp/recycle/poly/pcb_soukishori/
☞PCB含有製品についての産業廃棄物適正処理推進センターのチラシ
https://www.env.go.jp/recycle/poly/pcb-pamph/full5.pdf

日本の資源循環脅かす韓国の鉛リサイクル

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日本の資源循環脅かす韓国の鉛リサイクル
20年手つかずの“バーゼル法改正”へ向け、機運高まるか

使用済みの車のバッテリーの韓国への輸出が止まりません。バッテリーに含まれる鉛が高値で買い取られるためです。
韓国業者が日本で大量に廃バッテリーを買い付けるようになったのは鉛の地金価格が高騰した2007年以降。財務省貿易統計によると、使用済みバッテリーの輸出量は07年に3万トンを超え、12年以降は毎年7~10万トンに拡大しています。その大半が韓国への輸出で、国内の使用済みバッテリーの4割近くが韓国に出ている(日本鉱業協会)ともいわれます。
韓国が昨年輸入した廃バッテリーは42万トン(韓国貿易統計)。日本、米国、中東をはじめ全世界に集荷ネットワークを張り巡らせ、ここ10年で輸入量は10倍以上に伸長。それに伴い中東向けの補修バッテリー輸出や、欧米向けの地金輸出も拡大させ、世界最大の「鉛加工貿易国」として台頭してきました。
その韓国で今年6月、廃バッテリーリサイクル業者11社がリサイクル過程で発生した有害物質を不法投棄したとして、当局に摘発されました。韓国当局の発表によると、摘発された業者は不法投棄により約56億ウォン(約5億円)の利益を得ており、処理費を浮かした分を買い取り価格に上積みしていた可能性が疑われています。
この事件は、高値で廃バッテリーを大量購入する韓国業者により事業収益を圧迫されてきた国内の鉛関連業界に大きな波紋を広げました。使用済み鉛バッテリーは有害廃棄物に分類され、リサイクル過程で生じるヒ素や硫酸など有害物質は法律で規制されます。設備や廃棄費用のコストを義務として負担する国内事業者の間に、「韓国勢は不法投棄で調達時の競争力を得ていた」との疑念が高まるのも無理からぬことでしょう。
こうした事態を受け、環境省はバーゼル法の改正も視野に対策の検討を始めたようです。バーゼル法とは、廃棄物の越境移動を巡る問題の解決などを目的とするバーゼル条約に日本が1993年に批准したことに伴う国内実施法。越境移動の活発化に対応し欧州等はダイナミックに国内制度を見直していますが、日本では20年以上にわたり大きな見直しが行われていません。
貴重な金属資源として電子機器スクラップの争奪戦が世界中で激しくなるなか、国内で処理されるべき廃棄物の海外流出を防ぎ、環境リスクを輸出しないためのしくみが、時代の変化に即して柔軟かつタイムリーに運用されることを期待いたします。

☞ 環境省・廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会報告書はこちら
http://www.env.go.jp/press/mat01/102670.pdf
☞ 同報告書のポイントはこちら
http://www.env.go.jp/press/files/jp/102978.pdf

廃棄スマホの輸入審査、短縮へ

リサイクルトレンドウォッチ(49)

廃棄スマホの輸入審査、短縮へ
経産省・環境省、アジアからの希少金属確保めざし規制を緩和

経済産業省と環境省が、廃棄スマホやノートパソコンを輸入しやすくする規制緩和に踏み切ることになりました。スマホやパソコンの廃棄量は世界的に増加しています。現在、国内では香港や台湾、タイなどアジア各国・地域から、年3万~4万トン程度の廃棄スマホ・パソコンを輸入。その中から金やタングステン、ニッケルなどの希少金属を取り出し、再利用しています。これらの電子機器に含まれる希少金属は、リサイクルすれば再び電子部品の材料になることから、「都市鉱山」と呼ばれています。政府は輸入審査手続きを大幅に短縮することで、希少金属の確保と再利用の促進をめざすものです。
廃棄された電子機器の輸入については、不法投棄や不適正なリサイクルを防ぐため「特定有害廃棄物の輸出入規制法(バーゼル法)」によって、国が輸出入業者やリサイクル工場を事前にチェックするルールが定められています。現行法ではアジアから廃棄スマホを輸入する場合、現地の輸出業者が送り先の日本のリサイクル工場や輸出量を記載した種類を日本政府に提出。リサイクル工場側も受け入れ量や処理方法を記して提出し、政府が双方の情報をつきあわせて確認したうえで輸出を許可するため、審査に最短2カ月、最長で1年程度かかっています。一方、EUでは最短数週間で手続きが終わるため、審査に時間がかかる日本を避け、欧州にアジアの廃棄スマホが流れているといわれます。
経産・環境両省は来年の通常国会にバーゼル法の改正案を提出。法改正後は事前に認定したリサイクル工場であれば、輸出元が契約書類を示すだけで輸入できるようにして、アジア各国からの輸入の場合、現在2ヵ月~1年を要している審査期間を数週間から1ヵ月程度に縮める方針です。
日本では年5000万台を超える携帯電話・スマホが捨てられていますが、再利用率はわずか1割程度。国内リサイクル率の向上ととともに、こうした輸入拡大策が、都市鉱山からの希少金属の安定的な確保につながることを期待します。

OECD鉄鋼委員会、中国も参加の「グローバルフォーラム」を設置

リサイクルトレンドウォッチ(48)

OECD鉄鋼委員会、中国も参加の「グローバルフォーラム」を設置
長びく鉄鋼の過剰生産、チャイナリスク解消への一歩となるか?

経済協力開発機構(OECD)が8、9日にパリで鉄鋼委員会を開き、世界的な鉄鋼の過剰生産の解消に向けた協議の場を設けることで合意した、と日経新聞が報じました。今回の鉄鋼委員会にはOECD非加盟の中国やインドも招待国として参加。新たに設ける協議の場、「グローバル・フォーラム」は中国が加盟しないOECDとは切り離し、各国が対等な立場で議論する独立した会議体にすることを確認しました。
世界の鉄鋼過剰生産能力は2015年についに7億トンを超えました。日本の粗鋼生産量(1億トン強)の約7倍に相当する数字です。7億トン超のうち約4.3億トンが中国分(米国鉄鋼協会の見解)であるとされます。中国は経済の減速が鮮明になる中、内需で消費できない鋼材を国外へ安値で輸出。これが鋼材の国際市況を暴落させ、世界の鉄鋼メーカーを疲弊させています。生産量で世界首位のアルセロール・ミタルや、日本勢のライバルである韓国大手のポスコも15年12月期は最終赤字に沈んだほどで、インドのタタ製鉄は英国事業の売却検討を表明しています。
中国製品は高品質の日本製品とはそれほど競合せず、日本メーカーの打撃は比較的小さいとされてきましたが、やはり対岸の火事とはいかず、輸出採算の悪化、中国製品に押し出された韓国・台湾製品の日本市場への流入など、チャイナ・リスクの影響はじわじわと広がっています。
中国には町工場レベルを含めると約500社の鉄鋼メーカーが存在。年産3000万トン以上のメーカーは6社ですが、上位メーカーへのシェア集中は一向に進まず、乱立状態が続いています。自国メーカーの半分は赤字とされるだけに、中国政府も再編の必要性は認識しており、2015年まで10ヵ年続いた「鉄鋼産業発展政策」に代わる「調整計画」を打ち出しました。しかし雇用や税収を維持したい地方政府の抵抗にあうなど、中国特有の事情から、足踏みが続いています。
そうした中で設立された「グローバル・フォーラム」。日米欧の先進国に加え、中国やインドが参加する枠組みの中で、各国の生産量や設備能力の情報を共有する体制をいかに整えるのか、各国が補助金などで競争をゆがめる措置を取りやめられるのか、などが議題になります。年内にも開かれる見通しの第1回会合を、まずは注視したいものです。