EUの「サーキュラーエコノミー」導入から2年

リサイクルトレンドウォッチ (62)

EUの「サーキュラーエコノミー」導入から2年

資源循環ビジネスで2030年までに6000億ユーロ創出の構想は?

欧州連合(EU)が2015年12月に資源循環政策「サーキュラーエコノミー(以下CE)」を採択してちょうど2年が経過しました。CEは、ヨーロッパ経済を循環型経済システムへと移行することで、国際競争力の向上、持続可能な経済成長、新規雇用創出などをめざそうというもの。「循環型経済パッケージ」と呼ばれるさまざまな施策を進めていますが、その要となるのが、リサイクルや再利用などを通じて製品ライフサイクルの”Close the Loop”(ループを閉じる)を実現しようという考え方です。
資源や製品の価値をなるべく保持し、モノを長持ちさせて廃棄物の発生を抑え、さらに再生産することで、低炭素で資源効率的な社会を築こうというのがCEのベース。特に廃棄物については、2030年までに
・加盟国各自治体の廃棄物の65%をリサイクルする。
・包装廃棄物の75%をリサイクルする。
・すべての種類の埋立て廃棄量を最大10%削減する。
目標を掲げ、各国が取り組みを展開しています。
こうしたCE政策を推進する一方で、欧州には静脈産業をはじめとする資源循環ビジネスを拡大し、巨大な利益を創出するねらいがあります。廃棄物だけでなく、循環させるものを水やエネルギーなどに広げ、世界中の都市インフラを握ろうという戦略です。
欧州には年間売上高が1兆円を超える「リサイクルメジャー」と呼ばれる廃棄物処理・リサイクル企業が存在します。フランスのヴェオリアはその最大手で、廃棄物処理だけでなく上下水道やエネルギーなども展開。日本にも水処理事業で進出し、すでに国内40カ所の浄水場、42カ所の下水処理場の運転管理などを請け負っています。
欧州委員会の予測によれば、欧州はCE政策によって、2030年までに新たに200万人の雇用と6000億ユーロ(約79兆円)の経済価値を生み出せるとのこと。
2017年、イギリスのEU離脱を受けブレグジット交渉に着手した欧州ですが、揺れ動く政治経済のなかで、かつて高く掲げられたCEはどう動いていくのか・・・その行方が気になる年の暮れです。

 

 

世紀の大発見! 中性子星合体による重力波の初観測

リサイクルトレンドウォッチ(61)

世紀の大発見! 中性子星合体による重力波の初観測
金・プラチナ・レアアースなど重元素が生まれた謎の解明に一歩

10月16日、世界を驚嘆させる天文学のニュースが飛び込んできました。地球から約1億3000万光年離れた高密度の「中性子星」が衝突・合体した際に放出した“重力波”を、観測することに初成功した、と米欧の国際研究グループが発表したのです。
アルベルト・アインシュタインが1916年にその存在を予言した“重力波”とは、宇宙で発生した非常に激しい出来事が原因で起こる、時空のよじれやゆがみのこと。これまでに観測された重力波はすべて2つのブラックホールが合体した際に起こったもので、この場合には観測可能な痕跡は何も残りません。
しかし、今回は米国のLIGO(ライゴ=重力波望遠鏡)とNASAのフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡が8月17日に相次いで観測に成功。そこにはこの重力波がブラックホールではなく、死んだ星の合体によって生じたものであることを示す兆候が現れていました。彼らは直ちに世界各地の天文台に向けて、中性子星の衝突によって生じる破片をとらえ、重力波発生直後の様子を初めて観測する絶好のチャンスであることを呼びかけ。これに応じた日本の国立天文台を含む世界70機関による追加観測の結果、合体により放出された光やエックス線、ガンマ線などの観測に成功したものです。
今回、中性子星の合体が観測されたことによって、長い間議論されてきた重元素の起源も解明に一歩近づきました。重元素とは、鉄よりも重い金やプラチナなどの貴金属や、ネオジムなどのレアアースのこと。今回の爆発を赤外線で観測したところ、放出された破片には少なくとも地球1万個分の貴金属が含まれていることがわかったといいます。これは現在宇宙に存在が確認されている重金属の量に十分匹敵する数値だそうです。
1億3000万年前に死んだ二つの中性子星が衝突した後に残されたものは、太陽の約2.6倍の重さの天体だといいますが、それがブラックホールであるのか、異常に大きな中性子星であるのか、その正体は未だ解明されていないそう。
世界の天文学者を興奮のるつぼに巻き込んだ世紀の大発見。真理の解明にはまだまだ時間がかかりそうですが、夢のあるビッグニュースでした。

広がるシェアリング・エコノミー、アプリが加速

リサイクルトレンドウォッチ(60)

広がるシェアリング・エコノミー、アプリが加速
メルカリが自転車シェアで「リアル事業」に本格参入

フリマ(フリーマーケット)アプリ大手の「メルカリ」が、自転車シェアリング事業に参入することを発表しました。まずは都市部からの導入を想定して複数の地方自治体と交渉中で、早ければ2018年初めにも「メルチャリ」の名称でサービスを開始するようです。
メルカリといえば、2013年7月のサービス開始以来、急成長。現在では国内ダウンロード数5000万、海外ダウンロード数2500万(いずれも2017年7月)と、圧倒的な規模を誇るフリマアプリです。
スマートフォンのカメラで商品を撮影し、商品状態と価格を記入するだけで出品できるという手軽さが受け、若年層から広い年代層へ認知・利用が広がり、現在では月間100億円、年間1200億円以上の商品が流通しています。自転車シェアではメルカリのフリマアプリと連携し、同じIDを活用する計画とか。ネットで蓄積した事業モデルを、自転車シェアリングによってリアル事業と融合させることになります。
モノ・サービス・場所などを、多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組みは「シェアリング・エコノミー(共有型経済)」と呼ばれ、カーシェアリングや民泊をはじめ、空き駐車スペースの貸出、ご近所でのお手伝いサービスなど、さまざまなビジネスモデルが登場してきています。貸主は遊休資産を活用して収入を得られ、借主は資産を保有することなく利用できる、という相互メリットがその特徴。大きくみれば、モノの再利用の最適化により社会ストックを有効活用することにつながり、経済のしくみを変える新しい潮流であるともいわれます。
シェアリング・エコノミーはもともとシリコンバレーを起点に始まり、世界に広がりました。それが可能になった背景には、インターネットの普及により時間や場所にとらわれずにサービスを利用しやすくなり、個人間の取引コストが下がったことがあります。とくにここ数年のスマートフォンの普及とアプリの登場により、個人間ニーズのマッチングや、信頼性の担保が強化されたことで、その拡大に拍車がかかっているようです。
日本でもシェアリング・エコノミーは急速に拡大しています。矢野経済研究所の推計によると、シェアリンク・エコノミーの国内市場規模は、2014年度に約233億円でしたが、2018年度には462億円にまで拡大すると予測されています。

新しい鎮魂のかたち—-樹木葬で森を復元

リサイクルトレンドウォッチ(59)

新しい鎮魂のかたち—-樹木葬で森を復元
環境団体が主体。墓地運営による資金で森の復元に挑む新たなナショナルトラスト運動

8月のお盆休みも只中。盆踊り、花火大会などイベントも多いこの時期ですが、日本の夏祭りはその多くが、祖先の霊を供養する盂蘭盆会=お盆の行事にちなむようです。あの京都の大文字焼きも、お盆に迎えた先祖の霊を再び浄土へ送る「五山の送り火」のひとつです。
そんな鎮魂の季節に、閑話休題。新しいお墓のかたちとして近年注目される「樹木葬」に、国内で初めて環境団体が乗り出し、話題を呼んでいます。千葉県の房総丘陵にある土砂採取跡地で在来種による樹木葬の墓地をつくり、50年をかけて森に戻そうという活動で、ビオトープの普及や動植物の調査などを行う公益財団法人日本生態系協会が墓地の運営にあたります。
協会によると、墓地を整備した土地は尾根を切り開いた土砂採石跡地で、業者が倒産して放置されていたもの。周辺には首都圏では珍しいゲンジボタルの自生地があり、森を再生させる価値は高いと判断しましたが、土地の購入費用がネックでした。そこで樹木葬に着目。自然保護のために森林を買い取る「ナショナルトラスト」の発想で、周辺の森を含む約3万6000㎡を取得し、うち3500㎡を墓地区画として利用しながら再生することにしたそうです。
墓石の代わりに植えられているのは、在来種のヤマザクラ、コナラ、ムラサキシキブなどの若木。周辺の森から種を採り、数年をかけて育てたもので、多くは契約時に植樹されます。区画は再販売せずに30年間は手入れを続け、50年後には森に戻る構想です。
樹木葬が注目される背景には、都市部での深刻な墓不足もあります。全日本墓苑協会などでつくる厚労省研究班の報告によると、人口減少の日本でも墓の需要は2030年頃までは大きく減らないと推計。こうした傾向は特に都市部で顕著だといいます。
樹木を墓標とする「樹木葬」×ナショナルトラスト運動による「森の復元」。これまでにない新しい鎮魂のかたちに、変わる時代と変わらない心の、ひとつの在り方をみたような気がします。

世界のブラごみ総量63億トン、2050年には倍増と米ジョージア大が推計

リサイクルトレンドウォッチ(58)

世界のブラごみ総量63億トン、2050年には倍増と米ジョージア大が推計
フランスはプラスチック製使い捨て食品容器禁止へ

1950年以降に世界で製造されたプラスチック製品の総量は83億トンに達し、うち63億トンがごみとして捨てられたとする推計を、米ジョージア大の研究チームが19日付の米科学誌に発表しました。ごみの量約63億トンは、東京スカイツリーの重さに換算して約17万個分に相当します。
研究チームは樹脂や繊維など化学製品の統計データを分析。プラスチックの年間製造量は、1950年の200万トンから2015年には4億トンに増え、累計は83億トンに及びました。製造量の半分近くは、21世紀に入ってからのものだそうです。
ごみになった63億トンのうち1回でもリサイクルされたのはわずか9%で、12%が焼却処分され、79%は埋め立て処分されたり自然界にそのまま捨てられたりしているとの分析。再利用せずに使い捨てられるポリ袋などの包装材やペットボトルなどの容器は年々増加しており、2050年にはブラごみの総量が120億トンに倍増するとチームは予測しています。
こうしたプラスチックごみ削減に先進的な取り組みを進めているのがフランスです。2016年7月1日からスーパーなど小売業でのプラスチックレジ袋を廃止したのに続き、今年(2017年1月1日)からは生鮮食品包装用など、レジ袋以外の袋にもプラスチック袋の使用禁止が拡大適用されています。さらには、カップや皿、コップ、フォークなどあらゆる使い捨てプラスチック容器の使用を禁じる法律を世界で初めて制定。こちらは2020年1月には施行される予定で、同時にすべて使い捨て食器類について、家庭用コンポストなどで堆肥にできる生物由来の素材を50%使うことを義務づけるそうです。
対して、日本では・・・レジ袋、ペットボトル、お菓子の包装、食品トレー、コンビニの弁当容器など、身の回りにあふれる多種類のプラスチック。その量も多く、レジ袋だけでも一人年間300枚、毎日1世帯から1kgのプラゴミが発生するともいわれます。
夏休みに入り子どもと過ごす時間も増えるこの時期、ペットボトルの確実なリサイクルやレジ袋の辞退など、身近な3Rについて家族で話しあってみたいと考えています。

“都市鉱山からオリンピックメダル”プロジェクトが本格始動

リサイクルトレンドウォッチ(57)

“都市鉱山からオリンピックメダル”プロジェクトが本格始動
「金銀銅8トンを19年春までに」—回収目標に向け全国に取り組み広がる

東京五輪・パラリンピック組織委員会が、2020年大会の金、銀、銅メダルを全て国内の都市鉱山から製造するプロジェクトを進めています。
名称は「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」。都市鉱山とは、家電製品や携帯電話など都市で廃棄される電子機器の中に含まれる金銀銅などの金属資源のこと。デジタルカメラ、プリンター、電子レンジ、ゲーム機、ドライヤーなどの身近な製品には貴重な金属資源が大量に含まれており、これらの不用品を一般家庭などから集め、取り出したリサイクル金属で作製したメダルを「都市鉱山メダル」呼んでいます。
2016年に開催されたリオデジャネイロ五輪では銀と銅のメダルに30%リサイクル金属が使われましたが、全メダルをリサイクル金属で作った事例は過去になく、メダル全てを「都市鉱山メダル」とするのは、3年後の東京五輪が史上初めての試みになります。
本プロジェクトの提案者の1人である物質・材料研究機構のアドバイザー、原田幸明氏によれば、「オリンピック・パラリンピックでアスリートに授与されるメダルは約5000。必要な金属量は金・=9.6kg、銀=1210kg、銅=700kg。金9.6kgを回収するには、携帯電話だけなら数十万台、パソコンだけなら数万台に相当するが、金メダルは銀の土台に金メッキを施しているため銀や銅より必要量は少なく、必ず集まるものと期待している」とのこと。
加工時のロスなどを見込むと実際には4倍程度が必要で、2019年春ごろまでに金銀銅合計で約8トンが回収目標とされています。プロジェクトが公認する回収主体は、NTTと自治体、国による認定事業者。先行して取り組みを始めた東京都に続き、メダル専用の回収ボックス設置や回収イベントの開催が全国の自治体に広がっています。
資源小国といわれる日本ですが、足元の都市鉱山に眠っている金は7千トン、銀は約6万トンとも推計され、潜在量は天然鉱山が豊富な世界有数の資源大国並み。しかしながら回収率は低く、2013年4月に小型家電回収法が施行されて以降も、年間発生量(約65万トン)の8%程度にとどまっています。
オリンピックを契機に都市鉱山への一般の認知が高まり、家庭に退蔵されている使用済み電子機器などのリサイクルが大きく進むことを期待します。

「都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」の概要はこちら☞
https://tokyo2020.jp/jp/games/medals/project/

小型家電の回収について—当社の事業案内はこちら
http://www.m-kou.co.
jp/biz_appliance.html

 

下水汚泥肥料などで育てた農産物、『じゅんかん育ち』のネーミング決定!

リサイクルトレンドウォッチ(56)

下水汚泥肥料などで育てた農産物、『じゅんかん育ち』のネーミング決定!
“ビストロ下水道”=下水道資源の農業への活用をブランド名で後押し

国土交通省は4月13日、下水汚泥を発酵した肥料で育てた農作物など、「下水道発食材」の愛称を『じゅんかん育ち』に決定したと発表しました。
農業生産には肥料が不可欠ですが、日本はその原料となるリン鉱石を全量輸入にたよっています。農業・食品に関わるリンの輸入量は年間56万トンに及びますが、リン鉱石の価格は、世界的な食糧需要の急増や主要産出国の輸出制限等により、この10年ほど乱高下が続いています。
一方、国内の下水道には日本のリン輸入量の約1割にも相当するリンが流入しているとされますが、そのうちコンポスト(汚泥肥料)として利用されているのはわずか1割にすぎません。
下水処理場には、肥料原料となるリンや窒素のほかにも、栄養塩を含んだ処理水、熱や植物の生長・光合成を促進するCO2(二酸化炭素)など、さまざまな有機物資源やエネルギーが集まっていますが、その利用は一部に限られています。
国土交通省では、こうした下水道資源(再生水、汚泥、熱、CO2等)を農作物の栽培等に有効利用し、農業の生産性向上につなげようと、「BISTRO (ビストロ)下水道」の名称で取り組みを推進してきました。
汚泥肥料は穀物や野菜栽培に幅広く使われていますが、ほかにも下水の再生水を使用した水稲、サトウキビ、スッポンの養殖や、水処理過程で発生する熱・CO2を利用したハウス栽培、水耕栽培、アオノリの養殖など、「ビストロ下水道」の取り組みと成果が北から南まで、全国に広がっています。
こうした下水道発食材のイメージを向上するとともに、より親しまれやすい愛称をと、公募したネーミングコンテストで、833点の応募作品から選ばれたのが『じゅんかん育ち』。持続可能な環境調和型の農業を代表する農産品ブランドとして、店頭でその名前を見かける機会が増えるかもしれません。

国土交通省/日本下水道協会「ビストロ下水道」のレシピブックはこちら☞
http://www.mlit.go.jp/common/001036780.pdf

漁礁になった海底がれき--東日本大震災から6年

リサイクルトレンドウォッチ(55)

漁礁になった海底がれき--東日本大震災から6年
三陸沖海底の生態系を海洋開発研究機構が調査

東日本大震災から6年。東北地方太平洋側は地震と巨大津波により海の中も甚大な影響を受け、沿岸から沖合にかけ無数のがれきが沈んでいます。環境省の推計では、津波で海に流れ出た震災がれきは約500万トンに達し、このうち350万トンがまだ海底に沈んでいるとされます。そうしたなか最近の海底調査で、流されたがれきが海底でさまざまな生き物を集める「漁礁」のようになり、豊かな海が戻っている様子がわかってきました。
海洋研究開発機構は、今年2月11日~27日にかけ、調査研究船と無人探査機を使って三陸沖の海底環境や海底地形、生物分布を調査しました。海底では谷底のような地形になったところにがれきが多く集まり、水深540メートルの場所では車のバンパーや漁網に、クモヒトデやウミシダなどが群がっている様子が確かめられました。
この調査は、三陸沖の巨大地震や津波による海洋生態系への影響を研究し、被災地漁業の復興へ貢献することを目指した「東北マリンサイエンス拠点形成事業」(TEAMS)の一環として定期的に行われているもの。
2012年3月に、硬いものに付着して暮らすのを好むゴカイ類などががれきに集まっているのが初めて確認されました。以後、毎年の調査で、生物が増えている様子がわかってきています。がれきに群がるクモヒトデ、ウミシダ、ゴカイなどを餌にする魚が寄ってきて、がれきがいわば「漁礁」のような役割を果たしているとみられ、高級魚として知られるキンキやウニなども確認されているそうです。
TEAMSホームページで公開されているギャラリーでは、調査・観測で撮影された、東北の海にすむさまざまな生物の選りすぐりの動画を見ることができます。
海洋研究開発機構では、三陸の海にどんな生物が種類どの程度の密度ですんでいるかを示す地図づくりも進めているとか。季節ごとの変動や餌などとの関係を解明することで、環境に配慮した適切な漁獲量の判断や、将来同様の津波被害が起きた時の復興にも役立てたい、とのねらいもあるようです。

東北マリンサイエンス拠点形成事業(TEAMS)ホームページ
東北の海にすむ生物や海中の動画ギャラリーはこちら☞
http://www.i-teams.jp/gallery/j/index.html

眠れる「森林資源」を活かす道は? (下)

リサイクルトレンドウォッチ(54)

眠れる「森林資源」を活かす道は? (下)
伐り出した1本の木を最後まで活かす「カスケード利用」が鍵に・・

戦後全国につくられた人工林が成長し、いまや40年前の3倍にまで増加した日本の森林蓄積(皮付の幹の体積)。その量は60億㎥に達し、欧州(ロシアを除く)のどの国よりも多いといわれます。
植林から数十年を経たスギやヒノキがまさに伐りどきを迎えているわけですが、森林1ha当たりの木材生産量(㎥)をこの10年平均で見ると、ドイツ5.36㎥、オーストリア4.98㎥、フランス3.39㎥、イギリス3.06㎥に対し、日本はわずか0.69㎥。温暖多雨な気候条件にもかかわらず、ドイツやオーストリアの1/7、フランスやイギリスの1/5にとどまっています。
欧州主要国は1960年代から林道網整備に力を入れ始め、90年代末には林道ネットワークがほぼ確立しました。1990年代から持続可能な森林管理と木材利用へ向けた取り組みを展開して、世界をリード。着実に森を育てながら、木材生産・利用を拡大し、木質バイオマスのエネルギー利用などのイノベーションを進めてきたとされています。こうした手法で後れをとった日本が、足元の豊かな森林資源を活かすための課題は、木材を安く山から伐りだすための林道網の整備と、林業の機械化による生産性向上、複雑な流通経路の見直しにある、と専門家は指摘します。
課題山積ともいえますが、一方で明るい兆しも見え始めています。林野庁統計によれば、日本の木材自給率は平成23年から5年連続で上昇。平成26年には26年ぶりに30%台に回復し、平成27年には33.3%の自給率となっています。
木材から得られる産物は多種多様です。一本の樹木からは、製材用丸太・小径丸太・枝条・梢端が得られます。最も理想的な利用方法は、「見栄えの良い建築部材・家具」→「見えないところに使われる構造材」→「紙パルプ・ボード類用の低質材」→「木質バイオマス」と、質の高いものから順々にとっていって、最後まで余すところなく使い尽くすこと、と考えられています。いわば木材の“カスケード利用”*ともいえる使い方です。
近年、国内でも木質バイオマス発電施設が相次いで建設され、燃料用バイオマスチップの需要が増えています。製材加工の過程で大量に出る樹皮やおが屑など、十数年前までは埋立処分するしかない「廃棄物」であったものが、いまでは「副産物」として木質ペレットの原料となり、発電や事業用ボイラーに活用されています。
木材の伐り出しといえば、木を伐倒して価値のある丸太だけを引き出し残りは山に捨ててきたのが日本のこれまでの方式。今後、機械化により枝葉ごと林道まで引き出し低質材も運び出す「全木集材」に変われば、未利用木材が安価かつ安定的に供給されるようになります。木材の徹底したカスケード利用によって、再生可能エネルギーの利用が進むと同時に林業が再生する—-眠れる日本の森林資源が目覚める、そんな未来は、夢ではないような気がします。

*カスケード利用
資源やエネルギーを利用すると通常、品質が劣化します。その劣化した品質に応じて
段階的に有効利用することを「カスケード゛利用」といいます。

眠れる「森林資源」を活かす道は? (上)

リサイクルトレンドウォッチ(53)

眠れる「森林資源」を活かす道は? (上)
日本の森林蓄積は、年々増加している

阿修羅像などで知られる奈良の興福寺(世界遺産寺院)で、710年に建てられた中金堂の復元が、2018年の落慶をめざして進められています。中金堂は興福寺の中心となる重要なお堂ですが、藤原不比等による710年の創建以来、7度も火災により焼失、その度に再建されてきました。江戸時代に仮再建されたものが老朽化により2000年に解体され、創建1300年を迎えた2010年から当時の姿の復元をめざして日本建築の伝統的な木工技法で再建が進んでいるものです。
さて、再建工法は日本の伝統様式ながら、建物を支える66本の柱に使われているのは、アフリカ産のアパという直径2メートルにもなる巨木。梁などにはカナダ産のヒノキが使われています。樹齢200年を超えるような巨木は、残念ながら日本ではほぼ手に入らないためだそうです。
日本の森林面積は2500万ヘクタール。国土に占める森林面積の割合は68.5%で、OECD加盟国の中ではフィンランド(73.1%)に次ぐ2位となり、スウェーデン(68.4%)を上回っています(FAQ・2015年調査による)。しかし、戦後復興期には6000万㎥にも達していた木材生産量は、今では1800万㎥に過ぎず、戦後9割を超えていた木材自給率も現在は2割以下にまで落ち込んでいます。
なぜ、日本の林業がこれほどまでに衰退してしまったのか? よく指摘されるのが「安い外材が日本の林業をダメにした」という説です。戦後、復興のための木材需要が高まり、年間40-50万ヘクタールのペースで日本中の山や草地にスギやヒノキが植えられました。こうした人工林は、現在の日本の森林面積の約4割を占めています。しかし、高度成長期にはこれらの植林が未だ育っていなかったため、日本は1960年に木材輸入の自由化をスタート。1964年に完全自由化されたことで、大量に安定供給できる外材が市場を席巻し、国産材の供給量は低下の一途をたどりました。
日本の森はいま、新たな局面を迎えています。というのも、かつて大量に植林されたスギやヒノキが一斉に伐採期を迎えているからです。森林で生育する樹木群は時とともに絶えず変化しています。この40年で森林面積は変わりませんが、樹木の体積を示す蓄積量は、40年前の20億㎥から大きく増えています。
林野庁が1999年から実施している「森林資源モニタリング調査」によれば、第1期(1999~2003)調査から推計される全国の森林蓄積量(皮付の幹の体積)は52億㎥でしたが、第2期(2004~08)調査では60億㎥に達しました。40年前のおよそ3倍の水準です。
世界有数の貴重な宝、日本の森林資源を、有効に活かす手立てはないものか? いま注目されるアプローチについて、次回ご紹介します。