CO2増加が続くとコメの栄養価が下がる

リサイクルトレンドウォッチ(68)
CO2増加が続くとコメの栄養価が下がる
東大の研究チームが日本と中国で実験

このまま大気中のCO2濃度が上がり続けると、コメに含まれるビタミンやたんぱく質などの栄養分が減り、栄養価が下がってしまうとの研究結果が、東京大学などの研究チームにより発表されました。
地球温暖化の原因にもなる大気中のCO2濃度は、現在約400ppm。研究チームは日本と中国の実験農場で、今世紀中に達すると考えられる高いCO2濃度(568~590ppm)でジャポニカ米、インディカ米と、それらをかけ合わせたハイブリッド米を計18品種育て、通常の環境で育てたコメと比較。その結果、ビタミンB9(葉酸)は約30%、B1とB2は約17%、B5(パントテン酸)は約13%、たんぱく質が約10%、鉄は約8%、亜鉛は約5%、それぞれ減ったことが明らかになりました。
実験に使われたのは「FACE」と呼ばれる開放系大気CO2増加(Free-Air CO2 Enrichment)施設。国内では国立研究開発法人農業環境技術研究所がつくば市に保有し、将来予測される高い大気CO2濃度に対して、農業生態系がどのように応答するかを研究しています。
これまで、高CO2濃度が作物に与える影響を調べるには、主に温室や人工気象室などが利用されてきました。しかし、地球規模で変化する気候によって食料生産や炭素循環が受ける影響を明らかにするためには、作物群落や自然植生の反応を屋外の条件で調べる必要があります。つくばみらいFACEの周囲にはCO2ガスが流れるパイプが廻らされ、風向きとともにタイミングと量を調整しながらCO2を試験区内に排出し、全体的に通常より200ppm前後高いCO2濃度レベルを維持する仕組みになっています。
大気中のCO2濃度は、過去200年に100ppm以上上昇し、現在約400ppmとなっています。今後CO2排出削減に向けた取り組みがなされたとしても、大気CO2濃度は上昇を続け、今世紀半ばには470~570ppm、今世紀の終わりには540~970ppmにも到達すると予測されています。大気CO2濃度の上昇は、温暖化や水資源循環といった地球規模での環境変動の原因になるだけでなく、光合成や合成や蒸散といった作物の生理に影響して、生育、収量、水利用などに影響を与えます。
今回の実験において高CO2濃度条件下でコメの各種栄養価が下がった原因は、未だ明らかではありませんが、先進国と違って米を主食とし、一日に摂取するカロリーのうち半分以上を米に頼っている途上国の人々にとっては、健康にかかわる深刻な問題になると指摘されています。気候変動がもたらす数々の影響、その新しい側面を考えさせられるトピックでした。

つくばみらいFACE実験施設についてはこちら☞
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/outline/face/index.htmlhttp://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/outline/face/index.html