新しい鎮魂のかたち—-樹木葬で森を復元

リサイクルトレンドウォッチ(59)

新しい鎮魂のかたち—-樹木葬で森を復元
環境団体が主体。墓地運営による資金で森の復元に挑む新たなナショナルトラスト運動

8月のお盆休みも只中。盆踊り、花火大会などイベントも多いこの時期ですが、日本の夏祭りはその多くが、祖先の霊を供養する盂蘭盆会=お盆の行事にちなむようです。あの京都の大文字焼きも、お盆に迎えた先祖の霊を再び浄土へ送る「五山の送り火」のひとつです。
そんな鎮魂の季節に、閑話休題。新しいお墓のかたちとして近年注目される「樹木葬」に、国内で初めて環境団体が乗り出し、話題を呼んでいます。千葉県の房総丘陵にある土砂採取跡地で在来種による樹木葬の墓地をつくり、50年をかけて森に戻そうという活動で、ビオトープの普及や動植物の調査などを行う公益財団法人日本生態系協会が墓地の運営にあたります。
協会によると、墓地を整備した土地は尾根を切り開いた土砂採石跡地で、業者が倒産して放置されていたもの。周辺には首都圏では珍しいゲンジボタルの自生地があり、森を再生させる価値は高いと判断しましたが、土地の購入費用がネックでした。そこで樹木葬に着目。自然保護のために森林を買い取る「ナショナルトラスト」の発想で、周辺の森を含む約3万6000㎡を取得し、うち3500㎡を墓地区画として利用しながら再生することにしたそうです。
墓石の代わりに植えられているのは、在来種のヤマザクラ、コナラ、ムラサキシキブなどの若木。周辺の森から種を採り、数年をかけて育てたもので、多くは契約時に植樹されます。区画は再販売せずに30年間は手入れを続け、50年後には森に戻る構想です。
樹木葬が注目される背景には、都市部での深刻な墓不足もあります。全日本墓苑協会などでつくる厚労省研究班の報告によると、人口減少の日本でも墓の需要は2030年頃までは大きく減らないと推計。こうした傾向は特に都市部で顕著だといいます。
樹木を墓標とする「樹木葬」×ナショナルトラスト運動による「森の復元」。これまでにない新しい鎮魂のかたちに、変わる時代と変わらない心の、ひとつの在り方をみたような気がします。