眠れる「森林資源」を活かす道は? (下)

リサイクルトレンドウォッチ(54)

眠れる「森林資源」を活かす道は? (下)
伐り出した1本の木を最後まで活かす「カスケード利用」が鍵に・・

戦後全国につくられた人工林が成長し、いまや40年前の3倍にまで増加した日本の森林蓄積(皮付の幹の体積)。その量は60億㎥に達し、欧州(ロシアを除く)のどの国よりも多いといわれます。
植林から数十年を経たスギやヒノキがまさに伐りどきを迎えているわけですが、森林1ha当たりの木材生産量(㎥)をこの10年平均で見ると、ドイツ5.36㎥、オーストリア4.98㎥、フランス3.39㎥、イギリス3.06㎥に対し、日本はわずか0.69㎥。温暖多雨な気候条件にもかかわらず、ドイツやオーストリアの1/7、フランスやイギリスの1/5にとどまっています。
欧州主要国は1960年代から林道網整備に力を入れ始め、90年代末には林道ネットワークがほぼ確立しました。1990年代から持続可能な森林管理と木材利用へ向けた取り組みを展開して、世界をリード。着実に森を育てながら、木材生産・利用を拡大し、木質バイオマスのエネルギー利用などのイノベーションを進めてきたとされています。こうした手法で後れをとった日本が、足元の豊かな森林資源を活かすための課題は、木材を安く山から伐りだすための林道網の整備と、林業の機械化による生産性向上、複雑な流通経路の見直しにある、と専門家は指摘します。
課題山積ともいえますが、一方で明るい兆しも見え始めています。林野庁統計によれば、日本の木材自給率は平成23年から5年連続で上昇。平成26年には26年ぶりに30%台に回復し、平成27年には33.3%の自給率となっています。
木材から得られる産物は多種多様です。一本の樹木からは、製材用丸太・小径丸太・枝条・梢端が得られます。最も理想的な利用方法は、「見栄えの良い建築部材・家具」→「見えないところに使われる構造材」→「紙パルプ・ボード類用の低質材」→「木質バイオマス」と、質の高いものから順々にとっていって、最後まで余すところなく使い尽くすこと、と考えられています。いわば木材の“カスケード利用”*ともいえる使い方です。
近年、国内でも木質バイオマス発電施設が相次いで建設され、燃料用バイオマスチップの需要が増えています。製材加工の過程で大量に出る樹皮やおが屑など、十数年前までは埋立処分するしかない「廃棄物」であったものが、いまでは「副産物」として木質ペレットの原料となり、発電や事業用ボイラーに活用されています。
木材の伐り出しといえば、木を伐倒して価値のある丸太だけを引き出し残りは山に捨ててきたのが日本のこれまでの方式。今後、機械化により枝葉ごと林道まで引き出し低質材も運び出す「全木集材」に変われば、未利用木材が安価かつ安定的に供給されるようになります。木材の徹底したカスケード利用によって、再生可能エネルギーの利用が進むと同時に林業が再生する—-眠れる日本の森林資源が目覚める、そんな未来は、夢ではないような気がします。

*カスケード利用
資源やエネルギーを利用すると通常、品質が劣化します。その劣化した品質に応じて
段階的に有効利用することを「カスケード゛利用」といいます。